瞳が映す景色

①ー4・林檎と初恋と甘いココア

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①ー4・林檎と初恋と甘いココア
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誰のせいでもなく、気分は勝手に沈んでいた。


オレのせい、なのかもしれないけれど。


『別に、ゲンちゃんが気落ちすること?』


少なからず事情を知られているあの人には、きっとそう言われるんだろう。




二学期最終日。終業式も終わり、閑散とした校内では、教員たちも今日は仕事を一斉に切り上げ忘年会へ。今回は、結婚に伴い退職する女性教員の送別会も兼ねてとのことだった。


「ゲンちゃんも行くよね? 今から病気装うのは無しだから」


「……白鳥先生のお見通し、むかつきます」


「乗り気じゃなくても出といたほうがいいよ~、特に今回は。そう頻繁にないだけマシじゃないか。気が向いたら早退手伝ってあげるからさっ」


「期待してますよ」


首根っこを掴まなくたって逃げやしないのに、後片付けもそこそこ、忘年会会場の居酒屋へ連行された。

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