瞳が映す景色
「っ、そうだ、忘れてたっ! 白鳥先生から伝言頼まれてたんだった。こっち終わったら委員は職員室来てくれ、運んでほしいもんあるからって。海堂はもう帰ったか? すまん。一緒に来るもんだと」
「いいですよ。プリントとかだろうし平気です。それに、今日は海堂君、いてくれなくて良かったんですから」
「ん?」
「うるさいですから。集中出来ません」
藁科はひとりで勝手に納得をする。その何度も頷く姿は、何処かの土産の首が動く民芸品みたいで面白かった。
「じゃあ、わたしは職員室へ。片山先生、看板候補、ありがとうございました」
「ああ。オレはまだ戻らんから」
もう一度じゃあと言い残し、パタパタと走っていく後姿。その背中には、この頃特有の、万能の翼が生えているような気がした。
個人差があると想像するその翼――藁科のそれは、やけに大きいように感じる。頭のてっぺんで結われたポニーテールの長い黒髪が、それは楽しそうに跳ねていたからなんだろう。