瞳が映す景色
タクシーは去り、独りになった夜道は、死んでしまいそうなくらい寒かった。
凍える冬空の下。残されたオレは、しばらくその場で佇み――そして、一歩踏み出す。
駅へは向かわず、歩いて帰ろうと決めた。別に無理な距離じゃない。
途中、コンビニに寄って酒を買う。いつものビールに始まり、悪酔いする苦手なウイスキー、他種類は様々で雑にカゴへ放り込む。
呑み直そうと購入した酒たちは、ぞんざいにビニール袋を蹴り上げながら歩いたため、すぐに開封出来る状態じゃなくなっていた。……そのことも、どうでもよかった。
「――、?」
もうそこは自宅の目と鼻の先。アパートの二階。一番奥。オレの部屋の前に、誰かが立っている。
五メートル歩を進め、個人を認識した。
使い捨てのカイロを頬にあててはいるが、暖は足りてないないだろ、そんなんじゃ。耳が痛そうだ……なんで、マフラーをしてきていないのか。