瞳が映す景色
部屋に入り暖房をつける。電気も同時に。ひとつ暗い照明になっていたが、直すこともなくそのままベッドに腰掛けた。
「――で、何? またオレを困らせに来た?」
今のオレは冷たくて痛くて、きっと藁科は傷ついているんだろう。……なんて、いつものオレは棚上げかよ。
「困らない、なんて言えない……ごめんなさい。……片山先生、今日様子がおかしかったから気になって、――来ました」
誕生日の時のような言い訳はせず、藁科は真っ直ぐにオレを見て、そう言った。
「そう。どんなふうに?」
なのに、オレはなんて……。
「眉間のしわ。ずっと、消えなかったから」
藁科はそれ以上何も言わないまま勝手にキッチンに立ち、下げていた袋から何やら取り出し、何やら作業に取り掛かる。
部屋中に甘い匂いが漂い始め、オレはぼうっと、その様子をただただ眺めていた。