瞳が映す景色
藁科を筆頭に、オレが副担任を務めるクラスは、 良い子ばかりだ。いや、それでは語弊がある。成績がどうとかではなく、なんというか、いいやつ、と言ったほうがしっくりくるような。
だから、オレみたいのが順調にコトを進めていけるんだろう。
オレが出来てるんじゃない。
周りが、オレを教師にしてくれてるんだ。
教師になって三年目。もう、オレはあんなふうには走れない。
仕事には慣れてきたのにやることは増え、帰宅時間はどんどん遅くなっている。
教師の職が嫌いじゃあない。……けど、そんなに熱くもなれない。
担任の白鳥先生を見ていると、その有能ぶりに、 このままでいいのだろうか、でもどうすればと考える。
友人の幾人かは最近転職済みだ。オレたちの歳の、代表的な悩みのひとつなんだろう。
なんとなく、どっちつかずの日々に苛立つ。
藁科を見習い、試しにオレも職員室まで走ってみた。少しだけ感化された。晴れるもやもあるかもしれないと思ったんだ。
……が、結果はえらい違いだった。
わかっている。翼はないことくらい。