瞳が映す景色
「……っ!?」
肩を寄せてきた白鳥先生が笑顔で囁く。寄せられすぎて反対側の肩が冷えた窓に当たった。
「ゲンちゃん。なんで、さっきはあんなにハッキリ言えたのに、藁科にはずっと、何も言えないのかな? 進歩、劣化、――どっち?」
「な……っ」
なんで……知ってるんだ?
囁くだけ囁いて、白鳥先生はオレを置き去りにしていった。
『そんな顔しないでよ。知ってるの僕だけ。藁科から聞いたんでもないよ』
そんなこと疑ってはいない。……どうせ、絶妙なタイミングでオレのピンチに出くわしたとかだろう。
『それにしても、あの年頃の女の子って教師に夢見るもんなんだね。……もの凄く、安易だ』
最後の一言は、白鳥先生らしくない、珍しく冷たい響きだった。
安易……だと、オレは思わない。けど、意見は出来なかった。
何故なら、今日のことだけだったら、藁科のことがなかったら……その考えに辿り着けたかと、内側の自分に問いかけられてしまったからだ。