瞳が映す景色
翌日からのオレは、なんて滑稽だったことだろう。ひとりになるのを極力避けた。視線が、とても気になった。オレの意識が変わっただけで、周囲は何も変わっていない。それも、分かってはいたけれど……。
あと少し。もうすぐで、三年生は登校しなくなる。警戒すればいい。目を合わさなければいい。ひとりにならなければいい。
けど……そんなこと、完全になど無理な話で……。
「片山先生、何かあったんですか?」
「……、何も」
振り返らない。目は見ない。藁科が、どんな想いで、考えで、今、オレに接しているかなど、知らない。
知ってはいけない。
慣れてしまった……そんなふうになるべきじゃなかった、放課後の準備室。二月の冷たい風が、ガラス窓を激しく揺らす。
背後の藁科との距離は、きっと三歩ほど。それは、あの日からずっと、ここで保たれている距離。
「でも、ここ数日、おかしいです」
動揺は表に出してはいけない。
「っ!?」
誰かの足音が、聞こえた気がした。
「……それは、気のせいだ」
自分が本当に嫌いだ。
なんでここは学校なんだよ。
「なら、いいんです。」
なんで……
……なんで、教師と生徒なんだよ……。