瞳が映す景色
「――先生。もうすぐ、卒業式です」
「……ああ」
頼む。今日はもう……。藁科なら分かってるだろう?
「答えは、まだ、出ないですか?」
……………………、
もう……っ、
「……ぁっ」
「先生?」
っ、無理だっ!!
「もうっ!! ……出て行ってくれっ!!」
「っ」
勢いよく立ち上がったオレは、それでも振り返らないまま。
デスクの上のペンが何本も落ちていく音が響いて頭が痛い。
背後が気にはなった。けど、思いやる余裕はなかった。
斜め前にある小さなテレビの真っ黒な画面の中、 見えた藁科は立ちすくんでいた。その顔はとても……なんて悲しい。
けど、決して涙することはなく――。