瞳が映す景色
職員室と対角線上にあるのが、藁科たちのクラス。白鳥先生が担任、オレが副担任をしているクラスでもある。隣のもうひとクラスも、オレが副担任をしている。
「こんなに重かったら力のある男子に頼めばいいのにな。クラス委員は大変だ」
オレと藁科はダンボールを挟んで向かい合い支え、蟹の如く階段をゆっくり上る。
普通に持つと、身長差で重みが藁科の方へ行ってしまうものだから、膝と腰を曲げながらの行動は密かに辛い。けど、藁科は彼女なりに、ダンボール箱を精一杯上に持ち上げ、オレだけに負担をかけまいとしていて。
そんなのに気づいちまったら、頑張るしかないだろう。
オレがひとりで持つと言ったら即座に断られたことは、これも密かにやっかいだが。
「白鳥先生って……」
「ん、なんだ? カッコイイ?」
「……、何を言ってるんですか。白鳥先生、要領いいんですから、こういうとこにもその能力をめんどくさがらずに使ってくれればいいんです。クラス委員決める時も、名簿の最初と最後ってありきたりです」
「丁寧だけどきついな、藁科」
「っ、気をつけます。でも、私は藁科で『わ』と『ら』がトップバッターだから諦めもつきますけど、海堂君叫んでました。『どうしてこのクラスには、相川、伊藤、上野、加藤がいないんだぁ~』って」
「……まあ、加藤はいてもアウトだけどな。海堂はカワイイやつだ」