瞳が映す景色

………………



「……、分かりました。ご迷惑、おかけして、すみませんでした」


隠し切れない震えをまとった、とても細い声だった。


床に散らばったペンを丁寧に全て拾い、藁科は元の場所に戻してくれた。距離は近づいたが、立っていたオレは、そのせいで、小さな藁科を見下ろすことしか出来ない。様子を伺えたのは、丁寧に結われたポニーテールだけだった。


「失礼しました」


藁科が準備室を出て行く。その背中は無言で華奢な輪郭がふらりと倒れてしまいそうに見えた。




『分かりました』


……何を、分かったんだろう。


なんで、今だったんだ。


なんで……。









――


それっきりだった。


もう、藁科は、オレの前に現れることはなかった。




これで、終わり。


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①ー5・冷たい刃
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