瞳が映す景色
もうひとりの声の主は優しくやさしく語りかける。
「いいんじゃないの? 全部手のひらで転がすような女子高生、僕は嫌いだよ。藁科のそれは――片山先生を想う気持ちは、とても可愛い姿だと思って見てたけどね」
「っ、なんで片山先生のこと言い出すんですかっ! 別にっ、そのことだけじゃありません。 私は全てに対してそうなんですっ。物分りがいいのは最初だけ……。それに、白鳥先生に可愛いとか言ってもらっても、心はこれっぽちも揺れません」
「おおうっ、厳し~っ」
教室の窓際。夕焼けに包まれるふたりに気付かれないよう、オレは廊下で息を殺す。
一瞬覗いたその姿は、いつか見たここでのそれより大人びた気がする。
藁科は手すりにもたれ、白鳥先生と話していた。 その顔には、笑みもあってくれて。
――心が、疼いた。
衝動を抑えつけた。