瞳が映す景色
「……片山先生のこと。なんで、白鳥先生が知ってるんですか?」
「否定、しないんだね」
「あっ……。……お願いします。私、なんでもするから、どうか片山先生に不利益になるようなことは……」
本当にそうだ。詰めが甘い。いつもオレが言っていたじゃないか。
「なんでもとか、そんな台詞、不用意に口に出すもんじゃないよ、藁科。相手が僕で本当に良かった。何を要求されても、藁科はきっと、彼のためならやってのけそうだから。――安心しておいて。心配するようなこと、僕は何もしないから」
「……だったら、否定とかそんなこと、する必要がどこにっ!?」
「ちょっ、急に怒んないでよっ。……知ったのは、ちょっと偶然に。片山先生から聞いたんじゃないから……」
「そんなの分かってます」
遮るように放たれた信頼にいたたまれなくなる。
こんなこと、言う資格もないが……迷いなくオレを信じてくれたその言葉に、膝から崩れ落ちるくらい反応した。
泣いてしまいそうになった。耐えるのは、こんなに大変な行為なんだと、今、やっと実感した。
全てを隠しきれない、七つ年下の涙を堪える姿。胸を張っているくせに、色々と詰めが甘い歳相応の行動。
今思えば、それはなんて――
――眩しいものだったんだろう。
この感情は、こんなに熱くなるものだっただろうか。こんなに、抑えるのに必死になることだっただろうか。
こんなに。こんなに。