瞳が映す景色

凍える廊下から足が離れない。


「――そっか。でも、藁科に告白されて拒むなんて、頭おかしいんじゃないの? 彼は」


安易だと、あんなに冷たく言い放った白鳥先生がそんなことを言う。


「おかしくないですっ! ……でも、そうですか。やっぱり、隠すのって無理だったのかな。気を、付けてはいたんですけど。……だから、片山先生を、あんなふうにしちゃった。私が」


言葉が、少し砕けた。そのことに動揺する。


「どんなふうかは知らないけどね。――嫌われたの? だったら、僕にしておく?」


「嫌です。白鳥先生嘘っぽい。名前はキザだし調子いいし、オジサンだもんっ」


苦笑しながら、藁科は真に受けずさらりと受け流した。白鳥先生も、当然だが傷付いた様子もなく。


「それはショックだ。これでも、告白されたら付き合いたいと思うくらいには、藁科が大事だよ」


「それは恋じゃないでしょう? 分かってるくせに。……白鳥先生は、私が誘惑に飛びついてこないって、安全性を確認して言ってる」


「うん。他の生徒には恐ろしくて言えないよね~」


「それに、そんな簡単な相手を求めてもないくせにっ」

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