瞳が映す景色
教室の中のふたりは――自分たちは、まるで永遠の相手を欲しているんだと笑い合っているようだ。来世でさえも、その人がいいと思える相手。
けど、本当は誰だってそうなんだろう。恥ずかしくて口にはしないだけであって。本気の恋愛なら、誰だって。
「そうかもね。でも、ちょっとショックなのも本当。あとさ、片山先生もオジサンだよ? 僕より少し下なだけ」
「そんなの関係ないのが、恋愛でしょう? 矛盾なんて感じる前に」
なんで……なんでそんなに、柔らかい声でオレのこと語れるんだ。あんな酷い態度をとっちまったっていうのに。
「うん。よく分かってる。多分それ正解。――僕はね、藁科。教師と生徒の恋愛は『あり』だと、 根底では思ってる。お互いを駄目にしてしまう連中があまりにも多すぎて否定ばかりだけど」
「でも、それって」
「うん。教師と生徒以前に、恋愛は常に、誰と誰でもそうなことだよね。けど、やっぱりこの関係性に困難は付きまといやすい――藁科と片山先生なら、それを払い除けられるのは可能じゃないかと思ったんだよ。もっと、積極的になればよかったのに」
オレは廊下でひとり、誰か他のやつがこの空間に来ないことを祈った。もう少し、声を聴いていたかった。