瞳が映す景色

何度も何度も、頭を窓に当てる音がする。それはまるで、自分へ罰を与えているような。


「積極的……充分なりました。これ以上したらみんなにばれちゃって、片山先生は先生を辞めてしまわなければいけないくらい……。もちろん、片山先生が先生じゃなくても好きです。でも、先生でいてくれたから、出逢えて、好きになれたんだし、あの人には、先生でいてほしい。他の職業なんかじゃ役不足」


「すごいね。役不足の意味、理解して言ってる?」


「――『力量に比べて役目が不相応に軽いこと』です。今はまだまだかもだけど、将来有望です」


だから、いつも言っている。オレを買いかぶりすぎだと。確信に満ちた声なんか勿体ない。


「まあ、僕には敵わないけどね」


「それはどうでしょう」


「――もう諦めるの? そう感じるんだけど。もうすぐ、教師と生徒ではなくなるのに」


「……それまで待てば、何か違う未来はあったのかな。違う……と、思うんです。『もしも』を想像しちゃうと、私はまだまだだから、きっといつか、片山先生を責めてしまう。そんなの絶対にしたくないから考えません」


「、そっか」


「好きすぎて焦っちゃいました。片山先生のこと、ちゃんと考えてあげられなくて、追い詰めて、嫌われちゃった」


「ま、慰めが必要なら卒業までは受け付けるよ。藁科は、僕が安易だと思ってたことを、ほんの少し、覆してくれた子だから、特別にね」


「覆す?」


「いやいや。気にせずに」

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