瞳が映す景色

①ー7・消えない波紋

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①ー7・消えない波紋
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早朝、ネクタイが上手く締められなかった。久しぶりだからだと、思うことにした。




卒業式当日。卒業生たちは制服で過ごす最後の時を慈しんでいるようだった。当たり前だったものは、最後にならなければ宝だと分からないものが多い。そして、それにもっと早く気付ければと悔やむ。


可能なら、オレみたいに何度も後悔するなと願った。


式典終了後。副担任を務めていたふたつのクラスのうち、まずはひとつで挨拶を済ませた。


出来た教師じゃなかったと思う。けど、オレからの卒業祝いの言葉に涙する生徒がいてくれ、感謝も伝えてくれた。嬉しかった。素直に、受け止めさせてもらった。


教室を出て、隣の教室へ。


……足が、すくんだ。


けど、オレは今、教師として生徒の前に立つ。葛藤など抑えなくてはいけない。それは、決して崩してはいけないこと。


失礼極まりない教師以外の自分は一番奥へ追いやった。

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