いじめられっ子に捧ぐ俺の青春。 (上)
--お前なら、絶対勝ってたなぁ。
--篠崎君なら、一瞬だったねっ!!
…なんだよっ、皆して、俺のどこが強ぇー
んだよっ!!
…なんで、俺を許すんだよ。
…なんで、なんで。
お前らの方が……カッコイイよ。
…俺もカッコよくなりてー
(カッコ良く…さ、
なりてぇーーんだよぉっ!)
「ぅおぉぉぉぉらぁぁぁぁーーっっ!!」
気付けば俺は飛び出していた。
高校生の1人に後ろから飛び蹴りをかま
す。
そいつは塀に顔面から突っ込み、沈黙し
た。
驚いたもう1人がこちらを振り向くが、も
う遅い。
(俺は弱いから全力でぶん殴らないと…や
られる!)
そう思い、全力で放たれた渾身の右スト
レートはもう1人のやつの左顎を打ち抜い
た。
殴られた高校生は空中で右に1回転半の旋
回をした後、地面に叩きつけられた。
ほんの刹那の間にその場は、耳鳴りが五月
蝿い程の沈黙に包まれた。
「今度は……間に合っただろ? 」
地味少年は口を開けたまま止まっていた
が、やがて俺を見ながら、泣いてるのか
笑っているか分からない表情で
「うんっ」
と答えた。
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どうやら俺はとんでもなく強くなっていた
ようだ。
あまりにひどい倒れ方に思わず脈を確認し
た程だ。
まぁ、生きていてよかった。
「あの…篠崎君…ありがとう。」
「ん!? あぁ、別に…気にするな。」
「それより…壊れちまったな、それ。」
「…うん。 でも、いい記念になるか
ら…」
「なんの記念だょっ! 」
「……篠崎君に…助けてもらった記念。」
「…友達なら、当たり前だろ。」
「篠崎…拓也だ。」
俺は目の前のボロボロな少年を起こしてや
ろうと手を差し出した。
「佐野です…。 佐野 則武。」