いじめられっ子に捧ぐ俺の青春。 (上)
第二部 不良道
4 話 不良になるには 2
日々の筋トレから自信の付いてきた俺はク
ラスでも目立つグループに参入していた。
授業中に騒いだり、授業をサボったり、時
には消火器を発射させた強者もいた。
当然俺もそのグループの一員だ。
それなりの武勇伝を立てねばなるまい。
ということで、手始めに隣のクラスの窓ガ
ラスを蹴破ってやった。
(解: 廊下で遊んでいた際、ちょっとジャン
プし過ぎて足が窓に当たって割れてしまっ
たと言う事故。)
更にはクラス内の嫌われ者の頭を、蛍光灯
でかち割わる。
(解: 教室でそのグループの奴らがサッカー
ボールを蹴っていた所、たまたま拓也の足
に当たったボールが蛍光灯を貫き、更には
それがクラスの嫌われ者である山口君の頭
上に降り注いだ奇跡的な事故。)
という偉業も成し遂げた俺はあっという間
に学年の中で知らぬものはいない程の知名
度を得たのだ。
「おぃ、拓也ぁ。 あれ行こうぜ。」
おいとそのクラスの不良グループは何人
かに声をかけると、教室からズンズンと出て
いく。
『あれ』とは…
多々ある不良の条件の中でも最上級に位置
付けされるそれは…即ち『タバコ』だ。
危険過ぎる事だが、折角のお誘いだ。
これを避ければ俺は晴れて、いじめられっ
子に大逆転間違いなし。
…行かねばなるまぃ。
不良グループは恒例のトイレに集まり一本
のタバコを何人かで回して吸ったり、個人
で買ったものを吸ったりとまぁ、今トイレ
の中はギャングのアジトと化している…
(解: そこまでひどくない、豊かな日本の少
年達である。)
「お、拓也はねーの!? おい橋本、一本や
れよお前。」
グループのリーダー格がそうメンバー
の1人に声をかけた。
そいつは橋本と言って、金持ちのボンボン
であるためカートンでタバコを常備してい
る。
「ん?おお、ほら拓也。」
「ああ、ありがと。 でも悪い、俺タバコ
は吸わない主義でさ。」
「…あ!? 」
目を丸くしてリーダー格がこちらを見る。
(目線が怖い…
だがしかしっ、ここで何か1つ自分には譲
れないものがあるという事を見せつけねば
今後もナメられたまま、ただの一員になってしまう。
(俺は譲らんぞぉ。 ダメ、ぜったい。)
「悪いな。 ちょっと今、ボクシングやっ
ててさ。 タバコは止めてんだ。」
ははっ、と笑いながらとんでも無いパチを
こいてしまった。
しかし、もう後には引けない。
「おっ!! そうなのかょ!! マジか、スゲー
な!! 俺もさ、昔空手やっててさぁ~」
今度一緒に話そうぜと肩をバシバシやりな
がら「筋肉あんなー、やっぱボクシングの
お陰か」などと、楽しそうに話しかけてく
る。
…うむ。
筋トレはどうやら役に立ったようだ。
嘘八百でとにかくリーダー格と仲良くなっ
た俺は、そのグループの中でも一目置かれ
る存在になった。
俺、着々と不良になってるぜー!!