いじめられっ子に捧ぐ俺の青春。 (上)
5 話 ターニングポイント
と、喜んでる場合ではなかった。
内心では冷や汗ものだ。
いつ嘘がバレるかわからないし、その内
リーダーの武 (たけし)が組手でもやろーぜ。
などと言ってきたら洒落にならない。
嘘がバレれば…晴れていじめられっ子に降
格間違いなし……くそっ。 どうすれば…
不安の日々の中、俺は思い付いたのだ。
そうだ!!
本当にボクシングをやってしまえばいいん
だと。
早速ママの元へ…いゃ、違う。
中学生になる前に呼び方を変えると決めた
んだ…
「かっ、母さん! 」
「何よ、そんな急いで。」
(おっと、初めて母さんて呼んだのに違和感
なく返事を返してくるとは…我が母に脱帽)
「俺さ、ボクシングやりたいんだけど…
いいかな!? 」
(…どうしょうか…理由は。ケンカが
強く…いゃ、ダメだろ~)
「折角良い顔に生んであげたのに、残念
ね。 パパみたいになっちゃうわよっ。」
「いゃ!! それがなんというか、もっと体を
鍛え……」
うん?
今、なんと言ったんだ。
何やら予想の斜め下…じゃなくて。
予想外な返答だぞ、母よ。
「パパに相談してみなさい。」
んで、早速俺は親父の元へ。
「お、おやじっ…!」
「んっ!? 誰が親父だ!! 」
(こちらはどうやら、いきなりの呼び名
変更は無効なようだ)
「ぃや…あのさ、俺ボクシングやりたいん
だ。 やっていいかな? 」
「は~ん、さてはケンカだな!? 」
少々バカにされたが、親父は微笑みながら
了承してくれた。
ジムを紹介してくれるらしく、俺は親父に
ついて荒れ狂う男共の聖地へ赴く事になっ
た。
これは余談だが、親父はプロではないもの
の、全国高等学校ボクシング選抜大会の
チャンピオンだったらしい…
ジムの会長さんにプロになればよかったの
にと言われていた親父は少しカッコよく見
えてしまった。
今まで親父に怒られた事は無かったが、今
後も怒られないよう最大限気を払う事にし
よう。