三周年記念小説
最初に動いたのは
文也だった。

恵太を見て、
イライラが増大したらしい……

俺たちの目の前で
遠慮なく思いっ切り
しかもグーでぶん殴った。

そのおかげで
金縛りから解けた。

『文君、ナイス』

胡桃は笑っている。

青い顔をしたのは
先程の女性。

「何するんですか!?
貴女も何で
笑ってるんですか……」

事情を知らない
彼女にしてみれば
異様な光景だろう。

「文也、てめぇ
いきなり何しやがる」

恵太は殴られた左頬を
抑えながら立ち上がった。

『恵くんこそ、
五年も音信不通で
俺たちがどんだけ
心配したと思ってんですか!!

やっと見つけたと思ったら
女と居た?
あの人がどんな思いを
してたのか知らないでしょう』

文也は此処で
俺の名前を出さなかった。

出せるはずもないんだけど……

『私も文君と同じ意見だよ。

恵ちゃん、
これはあの人に対して
失礼過ぎじゃない?』

今のいままで黙っていた
胡桃まで口を開いた。

二人の言葉に
言い返せない恵太。

「あなたたち、
本当に何なんですか……」

置いてきぼりな彼女に
説明をしだしたのは
意外なことに恵太自身だった。

「のの、いいんだ
とりあえず、紹介からだよな
ドアの側にいるのがアニキの亮太
その隣に居るのが従姉妹の胡桃
最後に俺を殴ったのが
胡桃の旦那の文也で
三人とも俺の家族だ
俺は五年前、
誰にも言わずに
家を出て三人とも
連絡を断って、
その際に当時の恋人にも
黙って来たから怒ってるんだ」

“家族”か……

確かに俺たちは“家族”だ。

兄弟であり親戚なんだから。

だけど、そこに
俺たちが愛し合ってたことは
含まれていない……

『はぁ~』

文也が呆れたような
ため息を吐いた。
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