三周年記念小説
『成る程』

亮くんと
アイコンタクトをして笑った。

ということは、
恵くんも解ってるはずだよな?

まぁいいけど。

そんな中、痺れを切らしたのは
唯一の部外者の彼女だ。

「あなたたち変よ」

言われるまでもなく
俺たちは変だろうね。

アイコンタクトで
大体のことは伝わるし
今だって、胡桃ちゃんの
言いたいことは解ったし。

「で、本題だですけど
恵太を“返して”頂けますか?」

華織ちゃんには悪いが
恵くんは元々亮くんのだし
言葉としては間違っていない。

「恵太、帰ってくる気ある?」

前の台詞はののさんに
威圧するような目付きで、
後の台詞は恵くんに
優しい目付きで言った。

沈黙した空気がイタい。

恵くんはどうするんだろうか?

いまだに正座中の
恵くんに合わせて
亮くんが屈み
顔を覗き込む。

「アニキ、俺は……」

答えが見つからないらしい。

『もぉ、じれったいなぁ
恵ちゃんの今の気持ちを
亮ちゃんに言えばいいのよ』

胡桃ちゃんの言う通り
余計なことは考えずに
今の気持ちを言えばいい。

「恵太」

耳元で囁かれて
素直に言う気になったみたいだ。

昔から耳、
弱いままなんだなぁ。

「俺、今更
帰ってもいいの?」

後ろに居た
俺と胡桃ちゃんを
動揺した目で見て来た。

答えに詰まったのは
そっちだったか。

『恵ちゃんにその気が
あるなら帰っておいでよ
文君もいいでしょう?』

隣に居る俺も頷いた。

結局は家族だからな。

『居なくなった理由は
後でじっくり訊きますからね』

「恵太、お帰り
足、痺れたでしょう?」
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