付き合っちゃう⁇




「遅い」

「はいはい、すみませんね」

家に帰ると…いや、正確には彼の家に着くと
不機嫌なご様子で私を待っていた。

「腹減った」

「そう言われると思って材料買ってきてたので遅くなりました」

「手伝うから早く作ってくれ」

「じゃあ私着替えてくるからご飯チンして解凍しといて」

「わかった…」

この数ヶ月で私も随分と彼を飼いならした気がする。

いや、毎度呼ばれてここにノコノコとやって来て飯と言われ作っている私の方が飼いならされているか…。

「チャーハン…手抜いたな?」

「まぁ黙って食べなさいよ」

「いただきます……なんだこれ、上手い‼︎」

「そうでしょ〜」

10歳の頃から母によく分からないまま花嫁修業と言う名の元、料理を教え込まれた。

兄が祖母から聞いた話だと母は料理で父を射止めたらしい…その為私を料理がよく出来る女に育てるべく教え込んだらいい。

「お前本当料理だけは上手いよな」

「なっ料理だけって」

「これなら毎日食べたい」

…ママ、貴方の思いが叶ったかもしれません。

「でも、お前と一緒に暮らすのは嫌だな」

「はっ?」

「カラダがいくつあっても足りなくなるからな」

「はぁぁ?」

「毎回『もっと〜』って言って2回目以上のお誘いをしてくるのは誰だよ」

私は思わず口の中の物を吹き出しそうになった。

「そ、そんなこと私が言うわけないじゃない!」

目の前に座る男を睨みつけると、口角を上げニヤリと笑っていた。




< 21 / 49 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop