人形

　そんなこと聞かれたの、初めてだわ。



「自由に呼んでくれて構わないけど？」


「・・・自由に、ですか？」


「そう。自由に」



　暫く考えたらしい涼馬くんは、切り出した。



「他の方々は何とお呼びしているのでしょうか？
それに合わせたいと思います」


「そうねぇ・・・。
他の使用人たちは、私をお嬢様とか由真お嬢様と呼ぶわね」



「では、わたくしの前にあなたの執事だったという方は、何とお呼びしていたのですか？」



「あぁ・・・。お嬢様ね」



「では、わたくしもそう呼ばせていただきます」



「そう？まぁ良いわ」



　自由に呼んで構わないって言ったのは私だもの。



「・・・ご不満ですか？」


「え？どうしてそう思うの？」



「・・・いえ、なんとなくそう思いました」



　なんとなく、か。


　１番不思議な答えだわ。