人形
嫌だなぁ・・・・よりによって、あの日の夢なんて。
「おばちゃん誰ぇ?」
何も知らない無邪気な幼い私は、ニッコリ笑顔で聞く。
「おばちゃん、お嬢ちゃんのお父様の知り合い。
少し道を聞きたいんだけど、良いかしら?」
「良いよぉ!どこに行くの?」
「屋上だよ。
行き方、教えてくれるかな?」
「あいっ!」
元気よく右手をあげた幼い私は、おばちゃんを屋上の入り口まで連れて行く。
私は行きたくないけど、足が自然に、2人の後をついていく。
「どうされましたか?由真お嬢ちゃま」
まだ若い警備員さんが、幼い私に尋ねる。
「この人ねぇ、パパのお友達なんだってぇ。
屋上行きたいから、通してくれない?」
「隆也様のご友人ですか。
では、お通しいたします」
・・・警備員さん、この時お父様に確認もせず通してしまったから、このあとクビになったのよね・・・。
確認していれば、あの事件は起こらなかったはずなのに。