人形
「お嬢ちゃん、ありがとう。
ここまでで良いからね」
屋上までついて行こうとした私を、おばちゃんが相変わらずの気味悪い笑顔で制した。
「そぉ?
なら、ゆま戻るね。
でもおばちゃん、聞いても良いかな?」
「何だい?」
「おばちゃんの後ろにいる子は、誰ぇ?」
・・・そう。
気味悪いおばちゃんの後ろには、小さな男の子がいたのだ。
まるで存在を消すように立っているけど。
「この子かい?
この子はおばちゃんのお姉ちゃんの息子さん。
おばちゃんの甥ってことになるねぇ」
「おいちゃん、いくつ?」
「小学6年生だよ」
「じゃぁ、ゆまと同い年だぁ!
ゆま、泉由真だよ?
仲良くしてねぇ!」
さっと手を出すけど。
「じゃあね由真ちゃん。
おばちゃん急いでいるから、またね」
おばちゃんによって、その握手は遮られた。
もし、この時手を握っていたら・・・。