人形




☆☆☆



「・・・一睡も出来なかった」



 次の日、私は起きて一番に呟いた。



「おはようございます由真。
今朝の朝食は、スクランブルエッグに、クロワッサン、サラダでございます」



 いつも通りの無表情執事が、無駄のない動作で、私の前に料理を運んできた。



「あ・・・おはよう」


「どうされましたか由真。
顔色がすぐれませんね。

果物でも持って参りましょうか?」


「ううん、いい。いらない」



 私はちびちびと、クロワッサンをちぎって、口へと運び、もそもそと口を動かす。


 ・・・食欲ないわ。


 いつも通り、美味しいんだけどね?



「どうされましたか?
何か悩み事でもあるのでございますか?」


「ないよ・・・そんなこと」


「今日は学校をお休みなされた方がよろしいのでは?」


「いい、休まないで」



「ご無理はなさらないでください」


「無理なんてしていないよっ!」






< 113 / 208 >

この作品をシェア

pagetop