人形




 それなのに涼馬くんは。


 変わっているのね。


 いくらお父様に私が1番呼ばれたい呼び方で呼べと言っても、聞く人なんていないと思うわ。


 でも、彼は違った。


 お父様の言ったことを実行した。


 そして由真と私を呼んでくれる。



 ・・・嬉しいな。



「あら、由真ちゃん」



 目の前の階段から降りてくる女の人。


 私のお母様・泉優里奈(ゆりな)だ。


 裾がふんわりとした淡いピンク色のワンピースに身を包み、綺麗な胸元まである黒髪をなびかせる姿は、2人の子どもの母親という感じが全くしない。



 パッと見十代だけど、ちゃんとした40歳。


 少し危なっかしいけど、凄く優しい。





 そんなお母様は、手に大きな段ボールを抱えている。



「お母様!危ないわよ?」


「大丈夫よ由真ちゃん。
由真ちゃんは心配性ね。
わたしはそこまでドジじゃないわッ―――って、きゃあ!!」




 言っている傍から、お母様は階段を踏み外した。






< 12 / 208 >

この作品をシェア

pagetop