人形




 まるで、こうなることがわかっていたみたいだ。



「行き先、知りませんか?」


「・・・」


「ちょっとお兄ちゃん?
由真の質問に真面目に答えてくれないかなぁ?

さっきあんな姿見せたのに何も謝罪ないなんて、ひどくない?」



 翠子の言葉に、少しだけ緑さんの表情が変わった。



「た・・・確かにそうだな・・・・」



 さすが妹。


 兄を説得させた。



「・・・実は、俺も行き先知らねぇんだ。

ただこの間、メールが来た」



 気まずそうに言った緑さんは、私にスマホの画面を見せてくれた。



【送り主:リョウ
  題名:無題

 いきなりこんなメールして
 ごめんな。

 やっぱり僕、由真の
 執事でいられないや。

 前に話した目的、
 果たせないや。

 それだけ、じゃあな】



 ・・・どういうこと?



「俺も気になってメールして電話したんだけど、電源切られていたみたいで、繋がらなかったんだ」





< 134 / 208 >

この作品をシェア

pagetop