人形
電話を切った私は、時計を見た。
現在の時刻は、17時。
もうすぐ、日が暮れる。
良い時間だと思うわ。
あの日は、雪が降っていたけど。
「由真ちゃん、どこへ行くんだ?」
「話してくるんです。
1人で来るよう言われているので」
「そうか・・・。
気を付けてな。
場所はわかっているのか?」
「涼馬くんは、あの事件のことを私ならよく知っていると言っていました。
あの事件が起こったのは、泉家のお屋敷の屋上・・・。
涼馬くんはきっと、そこにいます」
「屋上!?」
いきなり緑さんが大声を出したので、思わず驚く。
「あぁ・・・ごめんな。
屋上か・・・」
「何かあるんですか?」
「いや・・・。
大したことじゃないんだけど。
リョウ、事件の後から、極度の高所恐怖症なんだ。
屋上へ続く扉の前に立つだけで、立っていることもままならなくなるほど・・・。
それなのに屋上を場所に指定するなんて・・・」