人形
「高所恐怖症・・・?」
そういえば、私前に涼馬くんを屋上へ連れて行ったことあるわね。
その時、涼馬くん、途中でどこか行った気が・・・。
あれは、高所恐怖症の症状だったの?
そんなに重度な高所恐怖症を持つ彼に、屋上で風をあびることさえも嫌だったはずなのに・・・。
涼馬くんは、私に気が付かれないよう、逃げ出したのかもしれない。
高所恐怖症の上、あの場所は、良い思い出がない。
逃げ出したくなる理由も、わかる。
「緑さん、情報ありがとう。
凄く役に立つわ。
私、涼馬くんの元へ行くわね。
死ぬってことじゃないわ。
説得しに行くの」
「リョウのこと、よろしく頼むな」
手を挨拶するみたいに上にあげたので、私も同じ動作をする。
そしてそのまま、ハイタッチ!
『リョウを、任せた』
緑さんが笑った時、思わず私は、そう感じた。
『任せて』
私もそんな思いを込めて、微笑んだ・・・。