人形




「・・・ハァ」


 涼馬くんは、わざとらしいほど、大きな溜息をついた。



「緑は本当に馬鹿ですねぇ。
変な情報を教えてしまって」


「変な情報じゃないわよ。
私にとっては、良い情報だわ。

だから、早く柵乗り越えなさい。
怖いんでしょ?」



「悪いですが、乗り越えるつもりはございません」



「そんなことしていると、落ちるわよ?」



「落ちた方が良いですよ。
元々、生きているのが不思議だと言われたほどでしたから」



 確かにここは、ビルの5階ぐらいの高さがある。


 落ちたら、ただでは済まない。


 最悪、2度と会えない。


 それなのに、涼馬くんは目と足を怪我したのみ。


 決して軽傷ではないけれど、生きているのが奇跡だ。


 私も、てっきり死んだかと思っていたわ。



「落ちた方が良いなんて言わないでよ」


「・・・由真はご存知ですか?
わたくしの両親が亡くなった、原因となった人物を」



「・・・あの叔母さんじゃないの?」







< 161 / 208 >

この作品をシェア

pagetop