人形
「・・・ハァ」
涼馬くんは、わざとらしいほど、大きな溜息をついた。
「緑は本当に馬鹿ですねぇ。
変な情報を教えてしまって」
「変な情報じゃないわよ。
私にとっては、良い情報だわ。
だから、早く柵乗り越えなさい。
怖いんでしょ?」
「悪いですが、乗り越えるつもりはございません」
「そんなことしていると、落ちるわよ?」
「落ちた方が良いですよ。
元々、生きているのが不思議だと言われたほどでしたから」
確かにここは、ビルの5階ぐらいの高さがある。
落ちたら、ただでは済まない。
最悪、2度と会えない。
それなのに、涼馬くんは目と足を怪我したのみ。
決して軽傷ではないけれど、生きているのが奇跡だ。
私も、てっきり死んだかと思っていたわ。
「落ちた方が良いなんて言わないでよ」
「・・・由真はご存知ですか?
わたくしの両親が亡くなった、原因となった人物を」
「・・・あの叔母さんじゃないの?」