人形




「その上、社長の座をお姉ちゃんに譲るって。
どうしてお姉ちゃんばかり、パパとママに気に入られるの?
アタシがお姉ちゃんより優先されたこと、あるかしら?」


「結衣子・・・」



「だからアタシ、決めたの。
お姉ちゃんの大切なものを奪った後に、お姉ちゃんとお義兄さんも殺すって。

どうせアタシは生きていても幸せになれないし。
パパとママも、アタシのこと嫌い。
こんな人生、いらないわ」



「りょ、涼馬も!?
お願い結衣子!涼馬だけはっ・・・」



「うるさい!
大体、この子がいるから、お姉ちゃんは幸せそうに見えるのよ!

アタシの中学の時のクラスメイト、シングルマザーだから、幸せじゃないはずって思っていたけど、何故か凄く幸せそうだった。
公園で話すお母さんたちも。

それを見てわかったの。
お姉ちゃんが幸せそうに見えるわけは、この子がいるから」



「じゃあ結衣子も子ども作れば良いじゃない!」



「無理よ・・・。
ケイタ、子どもが作れない体なの。

アタシ、聞いちゃったんだ。
パパとママの会話を。
アタシとケイタの結婚を許さないわけ。

パパとママはね、孫が欲しいのよ。
次期跡取りであるお姉ちゃんが死んだあと、立派にお姉ちゃんの跡を継げる孫が。
だからパパとママは許したの。
健康な体を持ったお義兄さんと結婚して、元気な子どもが生まれることを知ったから。

その点ケイタは子どもが出来ない体。
だからアタシとの結婚を許さなかったの。

全て、子どものせい。
涼馬くんのせいなのよ・・・?」



 叔母さんは、濁った瞳で、僕を見た。






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