人形
「・・・由真は変わっておりますね」
「そう?
でもね、これが本来の人間なの。
どうして復讐してしまうのかしらね。
やり場のない怒りを誰かにぶつけても、意味ないと思うのに」
「確かにそうですね。
ですが、人間はそういう生き物なのです。
わたくしも、その中の1人です。
由真も、いつしかそうなるのでは?」
「私は決してそんな復讐なんて考える人間にはならないわ。
そんなことしても、自分を苦しめるだけ。
自分を苦しめることはしたくないからね。
しかも私は泉の令嬢。
そんなことをして逮捕でもされたら、間宮のように没落させてしまうわ。
泉がいないと、この世界は大変なことになるわよ?」
「・・・さすが由真」
「私は普通のことをしただけ。
これが普通なのよ。
人間が本来やること。
そういえば、ドラマの台詞にあったわね。
“そんなことをしても、ご両親は喜ばないわよ”って。
今の涼馬くんに言ってあげるわね」
「・・・」
「今だったら、許せるわよ。
まぁ私の場合、殺されてもあなたを恨まない。
さっきも言ったけどね。
ただ、後悔はしないかしら?」
「後悔、ですか?」