人形




 両手で顔を隠しながら、私は指の隙間から、涼馬くんを見る。


 すると、目の前に整った顔立ちが見えた。



 って!



「りょ、涼馬くん!?
ち、近すぎるんだけど?」


「ご無礼をお許しください。
照れて顔が赤くなっている由真を、近くで見たいと思いまして」



「やぁ!
見ないでよぉ!!」



「恥ずかしがらないでください。
とてもレアな光景、見ない方が可笑しいのでございますよ」



 クスッと、からかうように彼は笑う。


 
「・・・ふふっ」


「何が可笑しいのですか?」



「だって、涼馬くん笑っているんだもん。

私、前まで涼馬くんの笑っているところ、見たことないんだもん。
ずっと無表情で。
見たかった表情、ずっと見えたなぁって。

凄い、今嬉しい」



「・・・由真」



「私、涼馬くんのこと好きなの。
今あなたは執事の仮でしょ?

本来、お嬢様と執事の恋愛はNGだけど、仮のあなたとは恋愛しても良いんでしょ?」



「最大の屁理屈ですね、由真」







「・・・どうしてだ、由真」





 え?








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