人形




 何の話をしているのだろう?


 私の話が少し出ている。



「じゃあね」



 会話が終わったらしく、電話を切った。



「・・・由真ちゃん?」


「ごめんねお母様。
心配になって来ちゃった。

涼馬くん、なんだって?」



「一命はとりとめたそうよ。
でも、今は眠っているって」



「私、病院行きたい」



「駄目よ由真ちゃん。
一人で病院へ行くなんて・・・危ないわ」



「一人・・・?
お父様は一緒じゃないのかしら?」



「隆也さん、急な仕事で海外へ今から行かなくちゃいけないみたいなの。
心配だから残ってとお願いしたんだけど、やっぱりお仕事も大事ですものね」



 確かに、大事だ。


 お父様は現在も泉財閥の社長。


 お父様が少しでも間違えれば、何万人といる社員とその家族の明日が心配になる。


 それが、泉ほどの大きな会社を維持する人間の使命だ。






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