人形




「面会時間は終わりましたよ?」


 看護師さんに言われ、思わず黙る。


 面会時間、そうか、そんなものがあったな。


 滅多に風邪の引かない丈夫さなので、病院へは行った記憶がない。


 お兄様が怪我で入院したことはあったけど、こんな夜遅くに来たことはないので、面会時間なんて関係なかったのだ。



 
「私、泉由真です。
都築涼馬くんのお見舞いなんです」


「都築涼馬さんと言う方は、当病院にはおりません。
お帰りください」



 はぁ?いないだと?


 お母様の言っていた病院なのに。




 私は1度病院を出て、お母様に連絡した。



『ごめんね由真ちゃん。
言うの忘れていたわ。

涼馬くんは仮でも、泉の執事。
誰かが襲いに来るかもしれないじゃない?
だから、泉の関係者は、病院側に言って、隠してもらっているの。
由也くんの時もそうだったのよ?』



「そうなんだ・・・。知らなかったわ」


『今から病院に言って、通してもらえるよう、お願いするわね?』


「お願い、お母様」



 その後、お母様はすぐに連絡したみたいで、先ほどの看護師さんが、病室まで案内してくれた。






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