人形




 なんてったって、あの大財閥の令嬢。


 社長を継ぐならまだしも、継がない、自由な人。


 将来、働かなくてもお金に困ることはないだろうとまで言えるほどの財閥だ。


 僕なんかとは比べ物にならないくらい良い暮らしをして。


 人を常に下に見て。


 自己中で我が儘な自分勝手な人かと思っていた。





 しかし、本人は全く違った。


 些細なこと(ミルクティーとか)で感動して、意外に素直で。


 寂しがり屋で、でも不器用だから寂しいとは言えない。


 友人も少ないし、しかもその子が不登校になったからって、毎日メールや電話で学校に来るよう言ったらしいじゃないか。


 僕の中での由真の印象が、簡単に崩れ落ちた。





 しかも、自殺しようとした僕を止めたり。


 普通の令嬢がするわけないだろう。


 夜道をいくら近いからって1人で来て、「ごめんなさい」と謝りながら泣くなんて。





 反則だろ。


 吃驚箱を開けた時より驚くよ。





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