人形
「涼馬くんは私の執事だよ」
「執事?聞いたことない名前だが?」
「当たり前じゃない。
今日来たばかりの新人なんだから」
「由真に新人をつけるだと?
あのお父様とお母様は何を考えているんだ。
由真に相応しいのは、ベテランの執事だろう」
大変。
このままだとお兄様、涼馬くんを私の専属から外してしまう。
折角仲良くなれると思っていたのに。
何が何でも阻止しなくては。
「お兄様、私、ベテランは嫌だわ」
「なんでだ?
可愛い由真を立派な女性にするには、ベテランの執事が不可欠だろう」
「だって、ベテランっておじいさんばかりでしょう?
厳しくって、嫌になっちゃうわ。
その点涼馬くんは優しくて若いし、ミステリアスな雰囲気を持っているの。
新人だとしても、ベテランよりは良いと思うの。
お兄様、私の意見に反対かしら?」
お兄様は昔から、私の意見に反対したことはない。
いつも、由真は正しいと言ってくれる。
「反対なんてしないよ。
由真がのぞむのなら、その執事でも良いだろう。
しかし、完全に彼を信頼したわけではない。
会わせてくれるか?お兄様に」
「えぇ、勿論」