人形




 あ、でも今は駄目だわ。



「お兄様、今涼馬くん休んでいるの」


「はぁ?執事のくせに休むのか?」



 お兄様の機嫌が悪くなっていく。


 再び、阻止しなくては。



「ひどいわお兄様。
執事だって人間よ?
休むのは当然だわ。

そしてさっきまで涼馬くんは部屋の掃除をしていたの。
きっと疲れたのよ。
そっとしておいてくれない?

それともお兄様は、私の意見が間違っているとでも言うのかしら?」



 必殺、無言の圧力。


 じっとそらさないでお兄様を見つめる。



「間違っているなんて言うもんか。
由真の言うことはいつも正しいよ。
お兄様が保証してやるからな」



 ・・・こういうやり取りの時思うんだけど。


 我が兄ながら、単純すぎじゃない?


 いつかお爺さんになったら、ニセモノの私から電話がかかってきて、アッサリ詐欺にあいそうだわ。


 この単純さ、どうにかならないのかしら?



「どうした由真?」


「ううん、何でもないのよお兄様」



 将来が心配だわ。






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