人形




「・・・都に、築く・・・だ」


「え?」



 お兄様が、独り言のように呟いた。


 私の耳には届いたけど。




 でも、どうして?


 どうしてお兄様が涼馬くんの名字を・・・。



「知り合いなの?」


「・・・」



 あれ?黙っちゃった。


 機関銃みたいによく話すお兄様なのに。



「お兄様・・・?」



「・・・悪いな由真!
お兄様、もう行かなくちゃいけないんだ!
じゃあな、愛しの妹よー!!」



「え?お、お兄様!?」



 わざとらしく言い放ったお兄様は、アッサリと私の部屋を出て行ってしまった。





 変なお兄様。


 危ないものでも食べたのかしら?


 元から変なお兄様なんだから。



 ますます変になると、今後の泉財閥が危ないわ。





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