人形
「よろしくお願いします」
「よろしくね」
隣の席に座った涼馬くんを見て、私はクラスメイトにばれないよう小さな声で話す。
「学校では敬語使わなくて良いわよ。
普通に、都築涼馬として楽しんでちょうだい」
「何を楽しむのでしょうか?」
「学校生活よ。
勉強はもう習ったところだって言うから、つまらないかもしれないけど、きっとすぐに新しい友達が出来て楽しくなると思うわ」
「・・・楽しく、ですか?」
少しだけ顔をしかめる涼馬くん。
「・・・わかりました」
不思議そうだったけど、そう返事した。
「私のことは・・・呼び方は何でも良いわ。
好きに呼んでちょうだい。
私はいつも通り涼馬くんと呼ぶわね」
「・・・僕も由真と呼びますね」
僕、と言うのが本当の一人称らしい。
らしいっていうか、俺と言うのも見たかったって言う気持ち、どっちもあるなぁ・・・。
「じゃあ、今日も授業頑張れよー」
担任がやる気のなさそうな言い方をして、教室を出て行った。