人形




 席に戻ると、涼馬くんは「お疲れ様でした」と声をかけてくれた。



「ありがとう、応援してくれて」


「僕は当然のことをしたまでです。

・・・にしても、驚きました」



「何に驚いたの?」



 眼帯で隠れていない左目が、私をじっと見つめた。


 漆黒の光を宿さない瞳が、どこか美しい。


 こんなこと、本人には言えないけどね。








 涼馬くんは、顔を少しだけ近づけた。


 冷たい息が、耳をくすぐる。


 一気に心臓がドキドキ言い始める。






 えっ・・・?


 不意打ち!?


 おぬし、やるなっ・・・!!





「由真って、意外に音痴なんだな」







 は?







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