人形
「・・・どこへ向かうのですか?」
「屋上よ。
泉財閥のお屋敷の最上階にある、屋上に。
昔、ある事件があってね。
それ以来立ち入り禁止なんだけどね」
「それなのに今から向かうのですか?」
「そうよ。
たまには屋根がないところで、ゆっくりしたいじゃない?
学校は屋上立ち入り禁止だし」
エレベーターで最上階に向かい、屋上へ続く扉を開けた。
忘れもしない・・・あの冬の日の出来事。
雪が静かに降る中、起きたあの事件。
『あああぁぁぁぁぁぁぁああああああぁぁ!!!』
・・・変なこと思い出しちゃった。
色々なことを毎日覚えているのに、この記憶だけは忘れないのね。
人は忘れる生き物だって、誰かが言っていた気がするのに。
完全な嘘なの?
本当なら、真実なら。
この記憶を、あの事件の全貌を、あの悲痛な叫びを。