人形





「じゃあ涼馬くん。
わからないことがあったら、由真に聞きなさい。
由真は生まれた時からこの屋敷に住んでいるからな。
色んな事を知っている」


「・・・わかりました」



 そう言った涼馬くんは、右足を引きずるように歩きながら、私の元へ来る。



「よろしくお願いいたします」



「あ、うん。よろしくね。じゃあ、行こうか」



 私は涼馬くんのペースに合わせながら、部屋を出る。



「・・・笑顔が戻ると良いのだがな」



 お父様がそんなことを言っていたが、私と涼馬くんの耳には届かなかった。










「一つ、聞いてもよろしいですか?」



 部屋を出てすぐ、涼馬くんが私に尋ねた。



「何?何でも聞いて良いよ」



「わたくしはあなたのこと、何とお呼びすればよろしいのですか?」



 え?


 初めての質問に、驚く。






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