人形
「・・・翠子様がそう思われるのも、可笑しくはありません。
誰もがそう思うことでしょう」
自覚あるんだ。
「・・・わたくしはただ・・・・・」
ただ?
「・・・由真のお父様・・・隆也様に、言われて仕えているだけの、本当に・・・仮の存在ですので・・・・・」
少しだけ、ほんの少しだけ。
涼馬さんの表情が変わる。
でも、言葉では言い表せないようなほど、複雑な表情をしている。
もしこの表情を表すとしたら・・・。
哀しみとか・・・苦しみとか。
そういう、負の感情が複雑に混ざり合うような表情。
見ているこっちが、哀しくなってくる。
「ごめんなさい・・・」
あたしは自分で気が付かないうちに、謝っていた。