人形





☆由真side☆



 カッとなって、思い切って走ってきた私。


 体力は自信ない方だから、すぐに立ち止まる。


 後ろから音は聞こえない。


 聞こえるのは、吹奏楽部の楽器の音だけ。




 ・・・追いかけて来ないの?


 一気に私は不安になった。





 ・・・駄目だなぁ、私。


 あの屋上へ行った日から、すぐ不安になる。


 涼馬くんがいたから、少しだけ変われるかなって期待していたんだけど。


 無理だったかぁ・・・。






「・・・泉?」



 この声は・・・。



「ケイ・・・?」



「よぉ久しぶり。元気だったか?」



「うん、まあね」



 あんまり嘘をつきたくない私だけど、嘘をついた。






< 93 / 208 >

この作品をシェア

pagetop