人形




「今日、私のクラスに転入生が来たの。
その人ね、振る舞いも笑顔も王子様って感じの人なの。

だけど、私の前では無表情なの。
一回も笑ってくれないし、きつい言葉で私を突き放すの。

まるで・・・お人形さんみたい・・・・」



「・・・嫉妬か?」


「違うよ、そんなものじゃないと思う。
でも、私の前でも笑ってほしいの」


「・・・目的でもあるんじゃねぇか?」


「目的?」



「この間見た漫画の話にそっくりだな。

ある所に、1人のお嬢様と執事がいました。
お嬢様は執事と仲良くしたくて話しかけますが、執事は全く相手にせず、お嬢様の傷つくことばかり言います。

実は、その執事はお嬢様の父親がやっている会社が潰した会社の息子で、お嬢様の父親が執事の父親の命も家も失わせてしまい、執事は、お嬢様の父親が溺愛している、お嬢様を自分の父親と同じ目にあわせようとしたのです。

しかし、真っ直ぐ純粋なお嬢様に、執事は惹かれていき、最後に執事はお嬢様と結婚したのでした、めでたしめでたしって話。

なんか似ている気がしねぇか?」



 ・・・似ているのか?


 しかし、ケイは凄いな。


 お嬢様と執事の話なんて・・・。


 私は涼馬くんのことを、ただの転入生と言っただけなのに。



「面白いだろ?
貸そうか?」


「借りても良い?」


「良いぜ。今度持ってきて、翠子に渡すな?」


「ありがとう、ケイ」






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