潮にのってきた彼女
翌日、高校生5人は海辺に集合した。
うちからひいらぎ岬と反対の方向に行ったところで、あまり遠くはなかったので、全員が徒歩だった。


天気は夏帆の言ったように晴れていた。
水平線から生まれた雲は、ぽつりぽつりと浮いていた。海も穏やかで、白いしぶきは控えめに舞っていた。
空と海が、青と白とのコントラストの美しさを、競い合っているかのようだった。



慧が、持ってきたパラソルを立てる。
パラソルは他にも近くに3つ4つあった。
どこも親子連れのようだ。


「あれ? 翔瑚、泳がないの?」


上に着ていた服を脱ぎ、白いワンピースの水着姿になった夏帆が言った。


「俺、水着持ってないから」

「この島住んでて水着がないなんて、お前とさくぐらいだな」

「え、朔乃先輩も?」


朔乃はこくりとうなづいた。
黒いワンピースを着て、パラソルの下で膝を抱えている。


「朔乃は日を浴びすぎると、すぐに疲れるんだ」


夏帆はへえ、と言うと、くるりと背を向けた。
そして慧と朔弥を促し、さっさと海に入ってしまった。

パラソルの下に腰をおろし、さて何を話そうかと話題を探し始めた途端に、予想外にも朔乃が口を開いた。
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