潮にのってきた彼女
夏帆も朔乃も、うっすらと察した様子の朔弥も、俺たちが帰って来た時、何も言わなかった。

気まずい空気が流れるかと思った時、朔弥がビーチボールをトスし、俺に向かって物凄いアタックを打ってきた。
あっけにとられていると、にやりと笑った朔弥は


「やろうぜ、ビーチバレー」


と言って、再びトスをあげたので、あわててよけた。


そして俺たちは、童心にかえって遊び始めた。

男3、女2の5人でやるビーチバレーは、いまいち遊びとして成立しなかったので、朔弥が近くにいる人を手当たり次第に誘い、俺たちは左手のみでアタックがうてるということで、6人ずつぐらいで戦った。

ボールの運動の向きを変える程度のアタックを打つには、左肩は何の支障もなかった。



とにかく、笑って、楽しんだ。
朔乃も夏帆も、慧も、心から楽しんでいる様子だった。

夕陽のさす砂浜は暑かったけれど、汗をかいたら休憩して、海にひざまでつかった。朔弥たちは海に飛び込んだ。そう、俺たちは夕方までずっと遊び続けていた。
気がつくと、全員息がきれていた。



やがて遠くに見える船が進行方向を変え、港に向かい出して、俺たちも帰り支度を始めた。

夏帆は水着をふいて上から服を着ると、さっさと1人で帰ってしまった。
でも、お別れ、という感じはしなかった。
今日から、今日からちゃんと、夏帆と接していけるような気がしていた。


真っ赤な太陽は海に沈む。
それは、1日の終わりを告げることで、同時に「次の日」を連想させること。
または昼の終わりで夜の始まり。

終わることがあれば、始まることがある。


永遠なんて言葉は安易に使えるものじゃないから、始まることがあれば終わることがある。

その連続性は何にだって通用するはずなんだと思う。

終わることだけがある日なんてものは、存在しないのだ。











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