潮にのってきた彼女
俺はさっそく次の日に、朝早く起き、こっそり家を抜け出して、岬へ向かった。

アクアは、人魚たちは、極端に早寝早起きだそうなので、おそらく寝ているということはないはずだ。


いつものように岩伝いの道をゆきながら、なんと切り出そうかと考えていた。
そして、そうすることで変わることを考えてみた。

好きとか嫌いとか、普通の学校生活の中ではいわゆる「告白」というものは、つきあいたいと思う相手にするもので、究極的に考えれば、少なからず「結婚」ということを意識したものであるはずだ。

だけど、この場合はそうではない。
――ということは確かである。

どちらかというと、確認に近いものになるような気もする。


この感情の終着点がどこなのかという疑問は、いつまでも残り続けるだろう。


それにしたって、伝えるしかないのだ。
今、自分にできる行動は「伝える」。たったそれだけ。

思えば、こんなに感情だけで動ける、ということを知ったのは初めてだ。
そしてそれを自分は心地よく感じている。



洞くつの前に立った。
いきなり押し入るのはあまりにも失礼すぎるから、名前を呼ぶしかない。

どう考えても緊張していた。告白なんて初めてだ。
砂浜にいったん座り込む。


ぽっかりと綺麗にあいた穴を見つめていた。
この向こうに、アクアが。いや、いないかもしれないけど。いや、いるような気はするんだけど。

3分かそこらで立ち上がり、穴の上に手をついて、呼んだ。


「アクア――」


穴の中に、ぼやっと声が広がる。
返事は、少ししてから背後に聞こえた。
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